銀鯖道の夜
三十九
南十字路とタキビシン海岸12
「もう時間だよ。行かう。」
シギパネルラが地圖と腕時計とをくらべながら云ひました。
「ああ、では失禮いたします。」
ジロバンニは、
ていねいにマーチャンたちにおじぎしました。
「さうですか。ジロちゃん、さよなら。」
マーチャンは、
また忙がしさうに、
あちこち歩きまはつて釣りをはじめました。
バリのヤマザキさんは、
「また米不足だ。」
さう云ひながら、
どこか苦しいといふふうでした。
【旧字解説】
行かう=行こう
地圖=地図
云ひました=言いました
失禮=失礼
さうですか=そうですか
忙しさう=忙しそう
歩きまはつて=歩き回って
さう云ひ=そう言い
いふふう=いう風
.
私は、
ドラゴン・グライド・プロダクションズに属している。
『ラカ法王の誕生』は、
命題となってひさしいのだが、
*プラトンのアナムネーシス論の意識はこの命題と似通っている。
(*哲学者、紀元前427年 – 紀元前347年)
プラトンのいう「idealism(観念的)なもの」は、
イデア論(theory of Forms, theory of Ideas)そのものであるが、
そのイデア系譜に属する、
「実在論(realism)」も同じものであり、
またこれは創造力のダイナミズムとなる重要な要素でもある。
ダイナミズムは、
超越的なものに関するための信仰となり、
そして人民は支配されるという文化となった。
イデア論表現では、
『悲劇』という幸福の反対側にあるダイナミズムが失われないように、
空虚な様式をシギパネルラの悲劇として描いている。
ジロバンニは、
美しい涅槃をシギパネルラと一緒に旅しているのだ。
それはどんな意味を持つのかがわかってくる重要な章です。
(40へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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