銀鯖道の夜
四拾
南十字路とタキビシン海岸13
タキビシン海岸のはてのもつと向うからか、
龍の形のぼんやりした狼煙のやうなものが、
きれいな桔梗いろのそらにうちあげられるのでした。
じつにそのすきとほつた綺麗な風は、
苹果の匂でいつぱいでした。
【旧字解説】
もつと向う=もっと向こう
狼煙=のろし
すきとほつた=透き通った
苹果の匂=リンゴの香り
いつぱい=いっぱい
タキビシン海岸に龍雲やリンゴの香りがふりそそぎ、
そのなかを二人をのせたキャラバンが走ってゆく。
細野晴臣の楽曲
『薔薇と野獣』を一幅の絵画にしてみるといい。
すると、
タキビシン的な世界がみえてくるだろう。
抑制から解き放たれ、
全体主義という境界線が消失し、
ハンノー(福音)と自身が溶けあい、
スペシャルな波(人生)に乗ることができる。
私はこの龍雲表現にしばし感じ入ってしまった。
(41へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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