銀鯖道の夜
三十六
南十字路とタキビシン海岸9
河原の礫は、
みんなすきとほつて、
たしかに水晶や黄玉や、
またくしやくしやの皺曲をあらはしたのや、
また稜から霧のやうな青白い光を出す鋼玉やらでした。
ジロバンニは、
走つてその渚に行つて、
水に手をひたしました。
けれどもあやしいその銀河の水は、
水素よりももつとすきとほつてゐたのです。
それでもたしかに流れてゐたことは、
二人の手首の、
水にひたしたところが、
少し水銀いろに浮いたやうに見えました。
その手首にぶつつかつてできた波は、
まるでエツクスのやうに連つて、
しらじらと南から北へ亙つて、
うつくしい燐光をあげて、
タキビが燃えるやうに見えたのでもわかりました。
【解説】
礫=ざれ、じゃり、小石
くしやくしやの皺曲をあらはした=くしゃくしゃの*褶曲を表した
*褶曲=波形に曲がった地層のこと
すきとほつてゐた=透きとおっていた
稜から霧のやうな青白い光を出す鋼玉=角から霧のような青白い光を出す**ハガネ玉
**ハガネ玉=クワイエットファンクのこと
エツクスのやうに連つて=タマサキ・エックスのように波と波が重なって
亙つて=渡って
(37へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
◎
□