
©Dragon Glide Productions
銀鯖道の夜
三十八
南十字路とタキビシン海岸11
ジロバンニとシギパネルラは、
青白い光を出す鋼玉を持ちながら、
またさつきの方へ近よつて行きました。
左手の渚には、
波がやさしい稻妻のやうに燃えて寄せ、
右手の崖には、
いちめん銀や貝殼でこさへたやうな櫻の木がゆれたのです。
だんだん近付いてみると、
カハナモクと書かれた服を着たマーチャンが、
また忙がしさうに、
あちこち歩きまはつて釣りをはじめました。
釣り竿をふりあげたりしてゐる、
三人のお友達に夢中でいろいろ指圖をしてゐました。
「君たちは參觀かね。」
バリのヤマザキさんらしい人が、
こつちを見て話しかけました。
「鋼玉が澤山あつたらう。
それはまあ、
ざつと壱千五百年ぐらゐ前の鋼玉だよ。
ごく新らしい方さ、
そのころはここは伊甚国だつたのだ。
このさかなかね、
これは檀那といつてね、
昔はもつとたくさん居たのさ。」
「移しにするんですか。」
「いや、證明するに要るんだ。
ぼくらからみると、
このさかなは百二十萬年ぐらゐ前にできたといふ證據もいろいろあがるけれども、
ぼくらとちがつたやつからみてもやつぱりこんな檀那に見えるかどうか、
あるひは宇宙人に見えやしないかといふことなのだ。」
バリのヤマザキさんはあちらに走つて行きました。
【解説】
鋼玉=クワイエットファンクのこと
稻妻のやうに=稲妻のように
こさへたやうな櫻の木=作られたような桜の木
忙がしさうに=忙しそうに
歩きまはつて=歩き回って
指圖をしてゐました=指図をしていました
參觀=課外授業、または遠足のこと
澤山あつたらう=たくさんあったでしょう
移し=魚拓のこと
できたといふ證據=できたという証拠、proof
檀那=太東岬にいた古来怪魚
宇宙人=タヌ星人のこと
(39へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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