銀鯖道の夜
ジロバンニの切符11
そしたら俄かにそこに、
つやつやしたチヤーが、
ひどくびつくりしたやうな顏をしてゐました。
隣りにはナツコが一ぱいに風に吹かれてゐるけやきの木のやうな姿勢で、
チヤーのうしろに立つてゐました。
「あら、ここどこでせう。まあ、きれいだわ。」
ナツコのうしろには眼を螢のやうに、
ぺかぺか消えたりともつたりしてゐるボンが、
そらの野原を見てゐるのでした。
【古語解説】
俄かに=にわかに、突然のさま
チヤー=チャー、タキビネコ・その01
ナツコ=タキビネコ・その02
吹かれてゐる=吹かれている
木のやうな=木のような
螢のやうに=ホタルのように
ぺかぺか消えたりともつたりしてゐる=ピカピカ消えたり灯ったりしている
ボン=タキビネコ・その03
(65へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
◎
□