銀鯖道の夜
ジロバンニの切符16
チヤーは教へるやうにそつとボンとナツコに云ひました。
「わたしたちはもう、
なんにもかなしいことはないのです。
わたくしたちはこんないいとこを旅して、
ぢき神さまのとこへ行きます。
そこならもう、
ほんたうに明るくて匂がよくて立派な人たちでいつぱいです。
そしてわたしたちの代りの人たちは、
きつとみんな助けられて、
自分のお家やらへ行くのです。
さあもうぢきですから元氣を出しておもしろくうたつて行きませう。」
【古語解説】
教へるやうにそつと=教えるようにそっと
チヤー=タキビネコ01
ボンとナツコに云ひました=ボンとナツコに言いました
ボンとナツコ=タキビネコ02と03
ぢき神さまのとこへ=じきにタキビ神のところへ
ほんたうに明るくて匂がよくて=本当に明るくて香りがよくて
ぢきですから=じきですから
元氣を出しておもしろくうたつて行きませう=元気を出して楽しく歌って行きましょう
【解説】
前章で酒井塗装店の前までやってきたジロバンニたちは、
タキビシン(タキビパレス)の輝きを見ました。
そこまで楽しく歌っていきましょうと、
天に召されていくチャーの発言は、
前向きな涅槃的要素が詰まった一節です。
(70へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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