銀鯖道の夜
ジロバンニの切符15
「うん、
だけど僕、
浪に乘らなければよかつたなあ。」
シギパネルラは云ひました。
「ええ、けれど、ごらんなさい。
そら、どうです。
あの立派な酒井塗装店を、
ね、あすこの向かうは、
夢に、
いつか見たあのフアンタジー、
追えば、
行き着くところタキビシン、
窓からぼんやり白く見えてゐるでせう、
あすこですよ。
ね、きれいでせう、
あんなに光つてゐます。」
ジロバンニは前の方を見ました。
【古語解説】
浪に乘らなければよかつた=波に乗らなければ良かった
云ひました=言いました
白く見えてゐるでせう=白く見えているでしょう
あすこですよ=あそこですよ
きれいでせう=きれいでしょう
光つてゐます=光っています
【解説】
あれあれ、
シギパネルラは、
この世界を後悔しているようですね。
酒井塗装店の向こうには、
夢にいつか見たタキビシン(タキビパレス)が輝き、
このファンタジーが読者には見えてきました。
(69へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
◎
□