銀鯖道の夜
ジロバンニの切符22
シギパネルラは
「なにがしあはせかわからないです。
ほんたうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら、
クローズアウトもクラヤミもみんなほんたうの幸福に近づく一あしづつですから。」
燈臺守は、
少しきまり惡さうに云ひました。
「ボサはもう歸つたよ。お父さんが迎ひにきたんだ。」
タキビ猫たちはもう睡つてゐました。
けれどもチャーの足は白くなつてゐたのです。
【古語解説】
しあはせ=幸せ。発言者によっては表記が「幸福」となることもある
ほんたうに=本当に
クローズアウト=波が一直線にくずれること。ここでは激烈な海の状態を指している
クラヤミ=太陽の光が見えないころ
燈臺守=太東岬灯台看守のこと。法王が演じている。一人38役
惡さうに云ひました=悪そうに言いました
ボサ=タキビネコ04
歸つた=帰った
チャー=タキビネコ01
迎ひに=迎えに
(76へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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