銀鯖道の夜
ジロバンニの切符27
シギパネルラが云ひました。
「ぼくはおつかさんが、
ほんたうに幸ひになるなら、
どんなことでもする。
けれどもいつたいどんなことが、
おつかさんのいちばんの幸ひなんだらう。」
にはかにボンがぱつちり眼をあいて云ひました。
「ああぼく、
いまお母さんの夢をみてゐたよ。
お母さんがね、
立派な戸棚や本のあるとこに居てね、
ぼくの方を見て手をだしてにこにこにこにこわらつたよ。
ぼく、
おつかさん、
りんごをひろつてきてあげませうか。
と云つたら眼がさめちやつた。
ああここ、
さつきのキヤラバンのなかだねえ。」
「その苹果がそこにあります。
このをぢさんにいただいたのですよ。」
ジロバンニが云ひました。
【古語解説】
シギパネルラ=ブルードラゴンでサーフ中に消息を経った主人公のひとり
云ひました=言いました
おつかさん=おっかさん、母のこと
ほんたうに幸ひ=本当に幸い。この物語のテーマ
にはかに=にわかに、突然
ボン=タキビネコ02
ぱつちり=パッチリ
にこにこにこにこ=ニコニコの強調と思われる
キヤラバン=ジロバンニたちを乗せてギンサバミチを走る貨物バン
苹果=リンゴ
をぢさん=おじさん、灯台看守のこと。
ジロバンニ=主人公。物語の案内役。やさしく達観した小学生
(81へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
◎
□