銀鯖道の夜
ジロバンニの切符24
キヤラバンは、
もう露の降りかかつた櫻の道をどんどんのぼつて行きました。
「いかがですか。
かういふ苹果はおはじめてでせう。」
向うの席の燈臺看守が、
いつか黄金と紅でうつくしくいろどられた大きな苹果を落さないやうに、
兩手で膝の上にかかえてゐました。
「おや、どつから來たのですか。
立派ですね。
ここらではこんな苹果ができるのですか。」
シギパネルラはほんたうにびつくりしたらしく、
燈臺看守の兩手にかかえられた一もりの苹果を、
眼を細くしたり首をまげたりしながら、
われを忘れてながめてゐました。
【古語解説】
キヤラバン=ジロバンニたちを乗せてギンサバミチを走る貨物バン
櫻の道をどんどんのぼつて=桜の道を登って。酒井塗装店の裏手の、頂上に続く道のこと
かういふ苹果はおはじめてでせう=こういうスイカは初めてでしょう
燈臺看守=灯台守、ラカ法王38世が演じている。ラッコ捕りも彼。コンクラーベは別世界
落さないやうに=落とさないように
ほんたうにびつくりした=本当にびっくりした
(78へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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