銀鯖道の夜
ジロバンニの切符23
ごとごととキヤラバンはきらびやかな櫻の道を進みました。
窓を見るとまるで幻燈のやうでした。
百も千もの大小さまざまのすきとほつた綺麗な花びらは、
夢のやうに燃えてゐて、
ジロバンニはわれを忘れてその櫻に見入りました。
酒井塗装店のうしろは、
ゆるい丘になつて、
その黒い平らな頂上は、
南に高く浮かんでゐる灰いろ熊星の下に、
ぼんやりとふだんよりも低く連つて見えました。
【古語解説】
すきとほつた=すきとおった
夢のやうに燃えてゐて=夢のように燃えていて
浮かんでゐる=浮かんでいる
灰いろ熊=グリズリー星
連つて=連なって
(77へ続きます)
文責:華厳旭 D.G.P.
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